This is my second paper for a monthly magazine "The world and Parliament" issued by Yukio Ozaki Memorial Foundation attached to the House of Representatives of Japanese National Diet. Yukio Ozaki is called "Father of Parliamentaly Politics".

My paper is on the establishment of "Soka City's Local Autonomy Foundamental Act" which is considered to be a constitution of a city.

English translation will be ready soon! Sorry for inconvinience. (Ken Seto)

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この小論文は「憲政の父・尾崎萼堂」を記念して設立された尾崎行雄記念財団が発行する

憲政記念館の権威ある機関誌「世界と議会」2003年11月号に掲載された第三弾です。

瀬戸健一郎が「みんなでまちづくり条例」審査特別委員長として、これを「自治基本条例」化する

市議会の条例案修正に入るための理念構築のためにまとめた小論で、全国から注目を集めています。

読み終わりましたら、是非ともご意見・ご感想をお寄せ下さい。

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掲載小論文第三弾「特別寄稿」

「日本においても地方自治は民主主義の学校になり得るか」

埼玉県草加市議会議員・みんなでまちづくり条例審査特別委員長 瀬戸健一郎


 果たして私たち末端の地方議員はこれまで、本当の住民自治に根ざした政治を行ってきたであろうか。欧米諸国と同様に民主主義の学校として、この国の国家と国民の関係のあるべき姿を底支えしてきたと言えるだろうか。私がいま直面しているのは、そんな単純な問いかけではないかと思う。

 埼玉県草加市は東京都足立区と隣接する人口二十三万人あまりの中規模の自治体である。市民の所得水準も決して低くはない上に、首都圏の中心に近いため土地などの固定資産の価値も高いので、そこそこの市税収入がある。

 しかし市民の約七割が東京都内を中心とする市外への通勤者であるために、職住は分離しており、市外で働く草加市民の労働による経済的な果実―つまり、法人税や事業税、事業所税などは現行法制下においては還元されることはない。

 さらに、国からの一般交付税収入は少なく、各事業に対する特別交付税措置や国県支出金の歳入全体に占める割合も大都市周辺自治体の宿命なのかもしれないが、多くの地方都市と比べてとても低い水準にある。

 いわばこれまで私たち草加市民は、日本の財政システムの中にあって、宛がい扶持で細々と市民生活をおくってきたと言ってもいいのかもしれない。

 一方、様々な市政の課題についての決定権についてはどうであっただろうか。元来日本の地方自治制度は国が議員内閣制であるのに対し、大統領制を採用してきたはずであり、市長と議員は二元代表制のもとにそれぞれ選挙されてきた。ところがその機能はきわめて狭い範囲に限られ、長年、国の決めた施策の下請けとしての役割を担ってきたにすぎない。

 学校の建て替え事業一つとっても、国が決めた交付税や起債の枠組みに囚われるあまり、本当に児童や周辺住民に喜ばれる決断が行われにくい環境が続いている。国や県の方針に従わなければ、次年度における交付税措置は受けられず、起債も認められないといったトラウマが今も市職員を縛り付けている。

 本当に住民が求める事業を実施することよりも、いかに御上の顔色をうかがって財政的に有利な事業を選択していくかに心を砕いていくことを一概に悪いと断じることはできない。しかし、それは理想の民主主義ではないと私は考える。

 住民が望む事業を実行し、住民が望む社会システムを地域独自に構築していくために法律をつくる。これが大統領制における立法機能=議会の役割である。そして、その決定に従って民意を最大限に現実化する立場から市長をトップとする行政機能がそれを実施していく。そして司法機能は、議会の立法作業が憲法や上位法令に抵触していないかを審査する。これが民主主義社会に置ける三権分立の基本的な考え方だ。

 ところがこれまで、この積極的な立法機能を唯一の議決機関たる議会を構成する、われわれ市議会議員たちが実行することは皆無であったと言っても過言ではない。市議会議員が議会に議員提案してきたのは、そのほとんどが国や県や市の行政機関に対する意見や要望の決議ばかりであったし、予算を伴う議案を自ら提案し可決することは執行権の侵害だと自ら断じ、戒めてきたのだ。

 今年三月、平成十五年度の予算を決める、一年間に四回開会される定例会中最も重要な三月定例会に、市長は「みんなでまちづくり条例案」を提案した。これは、昨今地方自治体で議論されはじめている自治基本条例を柱とする地方自治のあるべき姿を、地域独自に法制下していこうという取り組みの一環である。

 当初から草加市議会は、仮にこのような法制化の作業が進められるとすれば、まずこの作業の根幹となる自治基本条例の策定が必要と主張してきたが、市長は既に活動を始めているいくつかの市民団体をオーソライズする必要からこのまちづくり条例を先行して提案してきたわけである。

 この「みんなでまちづくり条例」の中身をみていくと確かに、市政に積極的に参加しようと活動する市民の役割や責任を明らかにしつつ、いかに草加市のまちづくりや意思決定に市民が関与しうるかが表現されているのだが、最終的に市民意思や市民合意がどのように政策として調整され、決定され、実行されるかが不明確であり、議会や行政の役割と責任が希薄な内容だとの印象をすべての議員が感じるにいたった。これらの疑問を払拭し、よりよい実効性のある制度を実現するために、草加市議会は「みんなでまちづくり条例審査特別委員会」の設置を決め、閉会中の特定案件として継続審査することになった。

 私が審査過程で痛感したのは、いかにこれまで市議会が立法機能と実質的に無縁であったかという、その事実である。そしてそのことは草加市役所にとっても同じであった。

 議会は市長から提案された条例案をただ右から左へと可決していくことがほとんどのケースであり、それは常に、国の法律、県の条例の改変に合わせて、右へならえで市のレベルでも同様の条例を整備することであったため、そもそも条例案の中身の議論はその余地すらなかった。

 しかし、今回の自治基本条例を中心とする法制化は国の指導によるものではない。まさに草加市が、草加市と草加市民の関係をどのように将来にわたって創りあげていくかを独自に決めていこうとする画期的な試みであり、このことには先例も前例も、お手本にすべき上位法令もないのである。

 さらに気づいたおもしろい誤解と錯覚は、多くの市職員が条例制定権は市長にあると無意識に考えていることである。国の政策が法律として可決されるとそれに伴う条例のひな形が全国一律に市長から議会へと提案され、それらは間違いなく可決されていくという長く続いた市長と議会の関係をみてきた彼らがそのように思い込むのも仕方がないことなのかもしれない。

 されど条例制定は議決がなくては行えないのだから、市長には条例の提案権はあっても制定権まではなく、むしろ議員定数の削減などの条例を除いてはその提案権すら行使することの極端に少なかった議会こそが、その議決権を併せもつのだから、条例制定権を握っているのである。このことを市長や市職員に理解させ認識させることは重要である。

 市長が執行権者として握っているのは、議会が議決した条例に従って、必要な規則や要項を制定する規則制定権のみなのである。

 さて、この議論を踏まえていくと、いったい誰が草加市の憲法たる自治基本条例を制定する作業を進めていくべきなのであろうか。

 恐らく、草加市のみならず、多くの地方自治体や地方議会で、地方分権から地方主権の時代に移行していくこの時代の潮目の中で、同じところを通過せざるをえないのではないかと思う。

 これまでのように、市長部局において条例案の素案をまとめ上げ、その過程において、いかに住民の声を反映させていくかという課題に取り組んでいくことになるのだろうが、草加市議会が下しつつある決断はそれとは異なる。

 実は、今回草加市長が提案してきた条例案は、現在進捗している草加市総合基本構想の柱の一つに掲げられている「パートナーシップのまちづくり」という理念を実現する事業の一部として、市民の懇話会組織に素案づくりを依頼して生まれたものを原案どおり議会に提案したものであった。

 ところがこの懇話会のメンバーの意識と行政の計画にわずかなズレを審議の過程でわれわれ議会は感じ取るにいたった。

 原案を策定した懇話会のメンバーは将来の草加市政のあらゆる分野に市民参加が実現されるよう、積極的な理念を盛り込むことに努力したが、これはむしろ最高法規である基本条例に盛り込まれるべき内容であった。片側で行政サイドは平成十七年度制定を目途にこれとは別に基本条例策定作業を進めようとしていた。

 もともと市民参加によって創られた「みんなでまちづくり条例案」に込められた市民の願いは、最高法規に盛り込まれるべき理念となっていることを実感した議会は、この条例案審査の過程の中で最大限の公開性を確保しながら、全市民的な参加を得る方法を模索することを決めた。そして、その過程を通じて必要な修正を加えながら、この条例案の最高法規性を整え、自治基本条例の制定作業を行政組織に委ねるのではなく、議会自らが主体的に担っていく作業に着手したところなのである。

 基本条例の制定作業を幅広い市民にともに考えてもらう事業とすべく、去る八月四日に、草加市議会主催で「いかに市民参加を制度化するか」と題したオープンセミナーを開催したところ、平日にもかかわらず五百名を超える一般市民の参加を得ることができた。

 また、原案の提案者である執行部への質疑の他に、原案を策定した懇話会メンバーや学識経験者を参考人として委員会に出席をお願いするなど、現行制度で可能な様々な試みを駆使して審査を進めている。

 さらに草加市ではこれまで市内にある獨協大学と協力してオープンカレッジを開催するなど、生涯学習社会づくりにも努力してきたところであるが、今秋から数ヶ月にわたって「自治基本講座」を市民にむけて開催することになった

。  昔から、地方自治は民主主義の学校であると言われてきた。いま、草加市議会は市民と行政と力を合わせて、そのことを実証しようとしている。これまでに全く経験したことのなかった領域へ、一歩、踏み出そうとしている。

 前例や先例のない分野であるため、決断は慎重かつ間違いのない手続きを手前から一つ一つクリアしていかなくてはならないが、これが新たな先例や前例になっていく崇高でやり甲斐のある仕事だ。

 きちんと市民に対しても説明責任を果たしつつ、唯一議会に付与された公聴会という機能も米国や英国のように、議会が市民や行政や専門家と直接接点がもてる貴重な制度として、わが国の地方議会でも活用していく可能性について、現在、検討中である。

 いかなるプロセスで、いかなる地方自治のあるべき姿が見つけ出されていくのか、また、いかなる基本条例を制定することができるのか、本来の自治にめざめた草加市議会の地道な取り組みは、いま始まったばかりだ。

(完)

(財団法人尾崎行雄記念財団機関誌「世界と議会」2003.11月号掲載特別寄稿)

※草加市議会による「まちづくり条例」の自治基本条例化という困難な作業は、その後、草加市議会初となる、この種の条例制定に関わる「公聴会」も開催し、パブリックコメントを経て、「草加市みんなでまちづくり自治基本条例」として制定されました。この作業に多大な貢献をしながらも、白血病で若くしてこの世を去った 大出 誠(おおで まこと)書記 の多大な貢献に敬意を表すると共に、彼のご冥福と、残された家族の祝福を心からお祈りします。  

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