This is my 4th paper for a monthly magazine "The world and Parliament" issued by Yukio Ozaki Memorial Foundation attached to the House of Representatives of Japanese National Diet. Yukio Ozaki is called "Father of Parliamentaly Politics".

My paper is on the Transfering a part of national tax revenue to local governmnet.

English translation will be ready soon! Sorry for inconvinience. (Ken Seto)

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この小論文は「憲政の父・尾崎萼堂」を記念して設立された尾崎行雄記念財団が発行する

憲政記念館の権威ある機関誌「世界と議会」2009年3月号「特別寄稿」として掲載されました。

小泉構造改革の内、地方分権の一環として行われた税源委譲に際して、県税から還付すべき

税収の一部を市が負担していることの不当性を世に訴えたもので、税源委譲の実態を説明しています。

読み終わりましたら、是非ともご意見・ご感想をお寄せ下さい。

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掲載小論文第四弾「特別寄稿」

「三位一体改革―三兆円の税源委譲の実態」

埼玉県草加市議会議員 瀬戸健一郎


「三割自治」〜こう呼ばれる日本の行政システム。国民の税金の7割が国税で、地方税が三割。しかし、実際に使われる税金は全体の7割が地方で、3割が国で使われている。この差四割に関わる予算の裁量権が、霞が関の国家官僚システムが地方を統治する権力基盤の源泉となっていて、この国の中央集権体質が変わらない原因となっている。

「三位一体改革」では、この現状を改革しようと、国から地方へ三兆円の税源を移譲する税制改正が行われた。

その実務で明らかになった事実〜埼玉県民税から還付すべき実額の一部、一千五百五十万円を草加市が肩代わりしている問題について、今日は皆さんに知っていただき、一緒に考えて欲しいと思う。

■三位一体改革と3兆円の税源移譲

三位一体改革によって、国の税金である所得税が減税となり、地方の税金である住民税が増税になって、国民の税負担の総額はプラス・マイナス・ゼロのまま、平成十九年に総額約三兆円の税源が国から地方に移譲された。これは様々な行政事務と権限を国から地方に移していく地方分権の一環として実行された。

※日本の税収は国税分と地方税分を合わせると約百兆円規模になるので、今回の税源委譲三兆円は、税収全体から見ると約三%程度の規模であることが分かりる。

■所得税と住民税―初年度限りの特例措置

しかし、住民税は前年に確定した課税所得に対して翌年に課税されるために、課税の時期にずれが生じる。今回の税源移譲では、所得税が減税、住民税が増税になるために、退職などによって、平成十九年に課税所得がなかった場合、所得税はゼロとなり、減税の恩恵が受けられず、住民税は前年の課税所得に対して課せられるため、住民税は増税となってしまう不利益が生じることになる。

これは今回の税源移譲の初年度のみに生じる問題なのですが、国はこの問題点を解決するために、住民税の増税分だけを申告により還付する特例措置を定めている。

■県民税と市民税〜住民税の実態

住民税の実態は、都道府県民税と市町村民税の区分があり、これまで市町村がこれを算定して収納し、都道府県民税分だけを都道府県に納付する。このことから、今回の住民税の還付も市町村がその全額を還付し、都道府県民税分からの還付金が市町村に徴収取扱費として戻される手続きが取られた。

■埼玉県が還付すべき実額の一部を草加市が肩代わり

ところが、草加市が埼玉県民税分として還付すべき金額に対し、埼玉県から草加市に対して支払わる徴収取扱費が約1千五百五十万円も少ないことが分かった。

確かにこの金額は、住民税の還付が一〇〇%完了した場合(調停額ベース)の金額であり、これまでに実際に還付された住民税の内、実際に草加市が埼玉県民税として還付した金額と徴収取扱費の差額は、約一千百万円なのだが、この金額は市町村にとって、様々な市民福祉に使われる貴重な原資と成りえるものだけに、草加市議会では去る九月定例会において、「所得変動に伴う経過措置による個人県民税の還付金額に対する徴収取扱費の額の算定適正化を求める意見書」を全会一致で埼玉県知事あてに提出した。

(※意見書をご覧になりたい方は、草加市議会ホームページを参照して下さい。)

■埼玉県は住民税の詳細データを把握していない

このような問題が発生したメカニズムの背景には、私にとっても意外な原因が存在していた。それは、埼玉県が住民税の算定をすべて県下の市町村に頼っているために、県民の住民税に関する詳細なデータを埼玉県が持っていないという事実だ。

■今回の税源移譲で住民税のどこが変わったか

これまで住民税の税率は、所得に応じて、市町村民税が三%、八%、一〇%の三段階であり、都道府県民税は二%、三%の二段階だった。これが、今回の税源移譲によって、市町村民税が一律六%、都道府県民税が一律四%となり、それぞれ最低税率部分が倍増することによって、総体では約三兆円、住民税は増収となったわけだ。

この税源移譲が行われる前は、市町村がすべての市町村民の住民税を算定し、徴収し、県民税分を埼玉県に納付していたわけですが、住民税全体に対する市町村民税と県民税の按分は概ね七:三であり、市町村が毎年、この煩雑な事務を今でも実施しています。この按分率が新制度では六:四に固定された。

(※住民税における市町村民税と都道府県民税の按分を6:4に固定することによって、常に実額ベースの積算データを管理している市町村の都道府県に対する住民データの優位性が緩和されたために、埼玉県は事前協議もないまま、この新しい按分率を県民税還付の金額を算出する根拠として適用したことになる。)

■実額ベースの草加市と按分率を主張する埼玉県

つまり、県はこれまでも住民税がすべての県民、一人ひとりについて市町村が個人ベースで積み上げてきた住民税の実額ベースのデータの詳細を把握しておらず、住民税の内、県民税は概ね三割であるという按分率をベースとした収納実態だけを把握するに止まっていたために、市町村が市町村民税と県民税を区分して管理している個人ベースの詳細データの重要性をあまり認識していないように思われる。

今回の問題は、草加市が全草加市民の住民税の納税データを個人ベースの実額で管理しているのに対して、埼玉県は、この実額を考慮せず、単純に新しく決定された市町村民税と県民税の按分率六:四を適用して県民税の還付金額を算定したために生じたものであることが、埼玉県議会での本会議質問でも明らかになっている。

■「還付」とは取った税金を返すこと

すでに納付された税から増税分を返すことを「還付」というわけですから、実際に還付された住民税の内、県民税から還付されるべき金額の一部を草加市が肩代わりして支出することはおかしいというのが、埼玉県に対して全会一致で意見書を提出した、私たち草加市議会の意思である。

(※住民の申告に基づいて実際の住民税は還付されるのですから、市町村の申告に基づいて県民税も市町村に既に収納した県民税から徴収取扱費として還付すべきであり、そのように「按分ベース」ではなく、「実額ベース」で市町村に徴収取扱費を支出している自治体が多数あることが分かってきている。)

■税源移譲は行われたが、縦割り行政の力関係は温存

今回のことで明らかになった事実、それは、今回の税源移譲において、@本来、所得税の還付分として国が対応すべきものが、税制改正の移行期という特殊事情によって住民税の還付として地方が負担するものとなったが、これに対して地方、特に都道府県から異議が出されなかったこと。A都道府県と市町村の還付金負担割合は、法令で明確に定めたルールがないため、都道府県の裁量に委ねられており、埼玉県の場合、市町村との十分な協議もなく決定されていること。また、事務レベルにおいては、これに対する市町村からの異議申し立てに、埼玉県は応じることなく、事態が推移してきたこと。の2点である。

これに対して、草加市議会の意見書と同様の趣旨から、埼玉県の市町村への負担転嫁に関しては、埼玉県市町村税務協議会(会長:舟橋功一-川越市長)も改善要望を行っているが、現時点で、埼玉県の姿勢は変わっていない。

つまり、国が地方に、都道府県が市町村に持ち続けている力関係が、今回の税源移譲の実務的な処理過程でも発揮されているとともに、その裁量権によって、都道府県は国に、市町村は都道府県に対してものが言いづらく、言っても話が通じにくい環境がいまだに存続しているというのが現実である。

(※"Treasury rules."=「財務担当者が支配する。」と言われるように、県は国からの特別交付税などの裁量が働く時期に、国に対する不満や反対の意見を持つことは避けるべきだと認識し、県も市町村に対して、県費の支出裁量権について同様だと考えているかもしれない。これは公務員のタテ社会における意識レベルの問題ですから、財務省や地方の財務担当者に対して、選良たる政治家の良識と政治力が常に問われているのだと、私は自覚している。これは政治家や政治に対する期待と信頼の問題でもある。)

■市町村より都道府県

また、住民税の按分が、一元化され、市町村民税と都道府県民税の按分は、概ね七:三から、六:四となり、市民生活に密着した行政サービスを提供している市町村よりも都道府県に対して手厚い税源移譲であったということだ。

市町村民税は上述のように、三%、八%、十%だったものが、六%になったので、最低税率部分は倍増したものの、八%、十%部分については減額したことになる。一方、都道府県民税は、二%、三%であったものが、四%になったので、すべての所得階層で増額する。

■国は地方に、都道府県は市町村に負担転嫁

税源移譲の初年度に限った特例措置とはいえ、新制度への移行に伴って全国の自治体が後から還付することになった住民税の総額は全国レベルでは、おそらく約一千数百億円規模になるのではないかと思われる。しかし、全体で約三兆円の税源移譲を行ったのだから、その程度の経費は自治体で賄えというのが、国が決めた今回の特例措置であり、都道府県はこれに対して、国に特別交付金措置を求める意見は表明せず、埼玉県においては、新制度における按分率を盾に、県民税から還付されるべき実額の一部を市町村に転嫁。これに異議を申し立てる草加市に対しては強硬な姿勢を崩さない。

■地方自治はデモクラシーの学校。―本物の地方主権をめざして

何のための地方分権なのだろうか。誰のための構造改革なのだろうか。

地方主権からはまだまだ程遠い、この国の現実に対して、本物の自治、本物のデモクラシーを建て上げていくことが、国から都道府県へ、都道府県から市町村へとつながる上意下達の巨大行政組織が国民の税を無駄に吸収することを許さず、真に市民生活の向上につながる具体の事業に税が活かされる日本改造を実現する原動力になると私は信じている。

(完)

(財団法人尾崎行雄記念財団機関誌「世界と議会」2009.3月号掲載特別寄稿)

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